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ヒーターのヒント

温度調節のヒント

電気ヒーターを使って、被加熱物を加熱・保温する場合、ヒーターに通電しっぱなしでは所定の温度をオーバーしてしまったり、季節によってはなかなか暖まらなかったりということが考えられます。

ねらい通りの精度で所定の温度に安定させるためには、何らかの方法でヒーターをON-OFFしたり、容量(電力)を調節して任意の温度になるよう温度コントロールする必要があります。

電気ヒーターを使って温度コントロールするいくつかの例をまとめてみました。

  1. 手動(マニュアル)ON-OFF制御
  2. タイマーを使ったON-OFF制御
  3. サーモスタット(温度調節器)によるON-OFF制御
  4. サイリスタ(SCR)による温度制御
  5. ヒーターを安全にお使いいただくためのヒント

1.手動(マニュアル)ON-OFF制御

温度調節器を用いず、加熱物の状態または温度計を目視により確認し、手動(マニュアル)でヒーター電源をON-OFFして温度コントロールをする方法です。いわば人間がセンサー&コントローラーです。
高精度の要求がない短時間の予備実験や研究段階で、簡便に温度コントロールする場合に利用できます。
以下の表に、単純なヒーターのON-OFFから、特殊なスイッチや回路構成によって簡単にヒータ電力を変える例をご紹介します。
なお、ここで紹介するスイッチ(SW)などは日本ヒーターでは取り扱っていません。あくまでも参考としてください。
これらの回路を使って手動操作によりヒーターを取り扱い、万一事故になっても、日本ヒーターは一切の責任を負いません。
(計算を容易にするため、以下の例ではヒーターの全容量を6kWとしています。)

表1-1 手動(マニュアル)ON-OFF制御

No. 回路構成 説明 概念図
ヒータ電力:6kW
(1) ヒーター1回路スイッチ
(以下、SW)1個
所定温度まで上がったら手動でSWを切る。温度が下がったら、SWを入れる。
常に傍にて人が監視する必要があるが安上がり。
大電力を一時に入れまた切るので基本料金の節約にはならない。
(2) ヒーター2回路SW2個 回路Aのヒーターで2kW、回路Bのヒーターで4kW、A+Bで6kWと3段階に手動で温度調節できる。最初は両方のSWを入れ、温度が上がったら1個のヒーターのSWを切る。
熱の使用量の大小や季節によりA、Bを選択する。
(3) ステップダウン式 ステップダウンSWをスライドして1~6kWの任意の熱量を取り出せる。小容量の場合はヒーターの熱が片寄る心配がある。大容量・実験室向き。
(4) 直列・並列式
《単相の場合》
パーキンSWは直列(1/4)・片切(1/2)・並列(1)・断(0)とヒータ電力を4段に切換えて使えるSW。小容量(数kW程度まで)のヒーターに使用される。
1.5kW→ 3kW → 6kW
(5) スターデルタ(Y△)方式
《3相の場合》
△(デルタ)結線で6kWのヒーターを結線替えしてY(スター)結線にすると容量は1/3となる。スイッチによりY-Δを切り替え、Δ:6kW×1/3=Y:2kW とする回路を組む。
無理のない方式で広く電動機の起動等に使われている。
下記注意参照:Y結線で設計されているヒーターを△結線にするのは危険です
(6) ダブル・スターデルタ式
《3相の場合》
電子回路による精密な温度コントロールは不要で、機械的なSWでON-OFFの信頼性を確保したいときに用いられる方法。コイルやコンデンサーを用いないので力率を100%として計算できる。(研究室向け)
OFF(0kW)も組み合わせると、5kW以外の5種類のヒータ電力を選択できます。ヒータ電力の組合せは下表参照のこと。

ダブルY・Δの組合せ(ヒーター電力一覧)

表1-2 ダブルY・Δの組合せ(ヒーター電力一覧)

A回路の電力B回路の電力合計電力
OFF(0kW)Y (1kW)1kW
Y (1kW)Y (1kW)2kW
Δ (3kW)OFF(0kW)3kW
Δ (3kW)Y (1kW)4kW
Δ (3kW)Δ (3kW)6kW

参考図

スターからデルタへ切り替える場合の注意

  1. Y(スター)からΔ(デルタ)へ切り替える場合、あらかじめ電機部品が許容電流値を超えないことを確認してください。

  2. ヒーター電力が3倍になることを考慮しないと火災の危険があります。

  3. スター結線で6kWのヒーターをΔ結線に結線替えすると、3倍=18kWのヒーターになります。
    電力の他に、ヒーターやヒーター以外の構成部品にも耐熱性に問題がないことを事前に確認しておく必要があります。これらを考慮した上で、はじめて安全なY-Δの切換が可能です。

  4. ΔをYにする場合は、ヒーター電力が1/3になる(ことを事前に了解していれば、1:1/3を切り替えて利用できる)ので、故障や火災の原因となるような問題はありません。

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2.タイマーを使ったON-OFF制御

温度センサーを必要とせず遠隔操作が可能です。熱の入出力が定常的で、温度過昇の心配が無い場合は有効な手段です。

表2-1 タイマーを使ったON-OFF制御

No. 回路構成 説明
(1) 入力調節器によるON-OFF制御 ON-OFFを時間で調整する。パルス(時間間隔)入力でヒーターの熱量を調節する。
(2) タイマーによる入力調節 8:00 ON、17:00 OFF、など定刻にON-OFFの繰り返しを行う。
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3.サーモスタットによるON-OFF制御

加熱物の量や温度・雰囲気温度のばらつきがあると、今までに紹介した手動切換方式で加熱物を所定の温度に加熱したり、温度を一定に保ったりすることは難しい場合があります。

温度制御を自動化する上で、もっとも簡単な方法はサーモスタット(温度調節器)を使うことです。
温度調節器の電気接点を物理的にON-OFFさせることにより、直接または電力に応じて間接的に(電磁開閉器を介するなど)ヒーターをON-OFFする方法です。

サーモスタットの接点容量(許容電流値)と電源電圧により、ヒーターを直接ON-OFFできる場合と電磁開閉器(リレー)を介さなければならない場合がありますので、ご注意ください。

下表に日本ヒーターで取り扱っている、サーモスタット(温度調節器)の種類をご紹介します。

3.1.サーモスタットの種類

表3-1 サーモスタット(温度調節器)を使った温度調節

No. 回路構成 説明 対応型式
(1) バイメタルによる温度制御 バイメタル(2種類の金属を張り合わせたもの)の熱膨張率の違いを応用して、設定温度でON-OFFする。 T1HCTMQT/TM
(2) 液体膨張による温度制御 感熱部に熱膨張率の高い液体を封入し、キャピラリーチューブ(細導管)を通してベローズ・ダイアフラム・ブルドン管などを作動させ電気接点をON-OFFする。機構の工夫により比較的大電力まで電磁開閉器無しで制御できる。 T1R-L T3RV-L T5E-Lなど

3.2.サーモスタットの使用例

液体膨張式(液体封入式)のサーモスタットは、廉価で手軽にヒーターのON-OFF制御が可能です。日本ヒーターでは、様々な設定温度範囲、接点容量の液体膨張式(液体封入式)のサーモスタットをご用意しています。
以下に液体膨張式(液体封入式)のサーモスタットを使った接続例をご紹介します。

表3-2 サーモスタットの使用例

単相用サーモスタット 3相用サーモスタット
単相用ヒーターの接続 3相用ヒーターの接続 3相用ヒーターの接続
回路図 回路図 回路図

接続可能なヒーター電力
電源
電圧
サーモスタットの
接点容量
25A15A
100V2.5kW1.5kW
200V5kW3kW

調節できるヒーター電力は、電磁開閉器(リレー)の接点容量で決まります。

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4.サイリスタ(SCR)による温度制御

温度センサーからの電気信号を使って、より高精度でかつ自動的に温度コントロールするためにサイリスタを使った制御装置があります。
サイリスタを使った制御機器はサーモスタットに比べてまだまだ高価ですが、高い精度と無接点継電器として高い信頼性を求める温度コントロールには欠かせないものになっています。
温度調節器(TIC)サイリスタ(SCR)および温度センサーを組み合わせてヒーターをコントロールします。
温度を検知して温度指示調節器(TIC)に信号を送るセンサーは、熱電対や測温抵抗体が用いられます。

表4-1 サイリスタ(SCR)制御ユニット・温度指示調節器(TIC)

No. 名称 説明 対応型式
(1) 位相制御装置 交流電源波形を途中でカットして電源電圧を低減する。急激に電圧が0になるため、ノイズの発生が問題になる場合もある。 TVSCP TVTCP
(2) 分周制御装置 分周周期(サンプリングタイム)のなかで、電源のON-OFFをおこなう。分周周期は電源電圧の1波長よりも長く、電源電圧の波形を途中でカットしないので電圧の低減はできないが、ノイズの発生は極めて少ない利点がある。 TVSCZ TVTCZ
(3) 温度指示調節器 温度センサー(熱電対・測温抵抗体)からの信号により計測した温度を表示するとともに、制御ユニットへ信号(ON-OFF、PID)を出力し、ヒーターの電力を調整する。 TIC
(4) ヒーターコントローラー・制御盤 サイリスタ制御機器、温度指示計、温度調節器が一体になっていて、あとは電源とヒーター、センサーをつなぐだけ。PID制御方式で、オートチューニング機能付き。そのほか、仕様に合わせた制御盤も設計製作可能。 T200T300 TCO TCS

代表的な温度センサー

表4-2 代表的な温度センサー

No. 名称 説明 対応型式
(1) 熱電対 異種の金属を接触させると、温度に比例した起電力を生ずるゼーベック効果を利用した温度センサー。
白金-白金ロジウム(Pt90%Rh10%)、クロメル(Ni90% Cr10)-アルメル(Ni97% Mn2.5% Fe0.5%)、鉄-コンスタンタン(Cu55% Ni45%)などの組み合わせがある。
また、これらの線は高価なため、延長する場合には専用の補償導線を用いる。
TK TJ
(2) 測温抵抗体 ニッケルや白金などの電気抵抗が温度に比例する性質を利用する温度センサー。
白金は特に精度が高く、たとえば温度係数0.39%/℃、0℃で100Ωに作られた素子(Pt100Ω)は、100℃では139Ωになる。
半導体製品のサーミスタに比べて感度は相当劣る(1/10以下)一方、長期安定性では優れている。
TPt TJPt

SCR(サイリスタ)を使った温度調節回路

SCR(サイリスタ)を使った温度調節回路の例

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5.安全にお使いいただくためのヒント

電気ヒーターの温度コントロールにおける、手動から自動化する例までを簡単にご紹介しました。

機能的には自動化により工数削減・高精度が実現しますが、ヒーターの電力が大きく加熱システムが複雑になる程、人為的なミスや故障による災害も大きなものになります。

温度設定値の人為的な間違い、サーモスタットの故障、温度センサーの設置位置不良による指示温度の不具合など、考慮すべき点はお客様の加熱システムにより千差万別です。

以下に、より安全性を高めるためのヒントをご紹介します。

  1. 上記のサーモスタットは通常B接点(設定温度で接点が開く=OFF)ですが、これに付け加えてA接点(設定温度で接点閉=ON)のサーモスタットを温度過昇防止の警報用(警報ブザーを鳴らす)に用いると、より安全にヒーターをお使いいただけます。

  2. B接点の温度調節器を2個直列に接続し、1個は温度調節用、他の1個は予備として使用すると、万一1個が故障しても他の1個がバックアップすることができます。

  3. 温度過昇防止装置は、一度作動したら自動的に復帰しない回路を組むことをおすすめします。

    • 自動復帰が可能な回路では、温度過昇防止装置が働いた後で加熱物の温度が下降したときにヒーター電源が自動復帰します。万一ヒーターや加熱槽・加熱物に異常が発生していた場合、思わぬ事故が発生する可能性が高くなります。

    • 温度過昇防止装置が作動した後には、作業者が目視で安全を確認した上、手動で加熱装置を再起動するようにしてください。

各製品の紹介は製品紹介のページからご覧ください。

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補足

お客様の仕様とご予算の範囲で最適なヒーターを納入することが、日本ヒーターの使命と考えていますが、上記のようにお客様の仕様に合わせた様々な安全対策もご提案することができます。

  • 長年の実績を踏まえて、ヒーターコントローラー、センサーなどの付属品を含んだ加熱システムとしてご提案いたします。

  • 電気ヒーターをご使用になる上での疑問点や、お困りになっていることなどがありましたらお気軽に日本ヒーターにお問い合わせください。

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温度調節器の注意

  1. 接点容量は記載のない場合は交流電源の抵抗負荷です。一部製品を除いて直流電源にはご使用になれません
  2. 許容接点容量以下でご使用ください。許容接点容量を超えて使用すると破損します。
  3. 電源電圧が上昇したり、接点近傍の温度が上昇したりするリスクを考慮して接点容量に余裕を持ってください。
  4. ゴミやほこりの多い場所ではご使用になれません。
  5. 振動や衝撃が加わる場所ではご使用になれません。
  6. 内部の回路を変えないでください。
  7. 温度調節器をヒーターの近傍に設置するとヒーターからの熱で誤作動、または破損します。専用の電線を使って離れた位置に設置してください
  8. 温度調節器と温度過昇防止装置は併用してご使用ください。温度調節器は目標温度設定用として、温度過昇防止装置は事故防止用としてご使用ください。
  9. 電磁開閉器を使わずにヒーターを直接接続する場合、サーモスタットの接点容量にご注意ください。定格容量を超える電力のヒーターを接続すると危険です。

  10. 複数のヒーターエレメントを使った大電力ヒーターで温度調節をする場合、ヒーターの配置を工夫したり、回路を分けることにより伝熱の均一化を考慮する必要があります。ヒーターFAQ10を参照してください。

  11. 予告無く製品の仕様を変更する場合があります。ご購入の前に、必ず各製品の仕様をご確認ください。

  12. センサーの取り扱いについては温度調節機器・温度センサー取り扱い上の注意事項をご覧ください。